以前、知りたい答えを探して一冊の本を約2時間かけて読んだものの、読み終えてから「この本には求めていた内容がなかった」と気づいたことがあります。
本を最後まで読むことと、必要な学びを得ることは同じではありません。
では、本から得た知識を、実際の仕事へつなげるにはどうすればよいのでしょうか。
そのヒントを得たのが、横山信弘著『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』です。
本書から、私が特に使いたいと思ったのは次の3つです。
- 日々の仕事から「学ぶ問い」をつくる
- 水平読書で、複数の答えを比較する
- スケール推定で、予測・実践・修正を繰り返す
この3つは、別々の勉強法ではありません。
仕事で生まれた問いについて複数の本から答えを探し、実際に使って結果を振り返る。一つの学習サイクルとして使えます。
この記事では、本書で紹介されているすべてのスキルを網羅するのではなく、現在の仕事とDaquo Lab.の読書・実験に使いたい方法へ絞って紹介します。
この本を読んだ理由
私は仕事に必要な知識や仕事術を身につけるために、ビジネス書を読んできました。
しかし、本を一冊読み終えても、実際の仕事が変わるとは限りません。
内容を理解しただけで満足したり、実践したいことを選びすぎたりして、結局どれも試さないことがありました。
反対に、本の方法をそのまま試しても、自分の仕事には合わないことがあります。
振り返ってみると、以前の私は、
「何を知りたいのか」
よりも、
「この本を最後まで読むこと」
を優先していたのかもしれません。
そこで、勉強時間を増やす方法ではなく、仕事に必要な知識をどのように選び、身につけ、実践へつなげるのかを知りたいと思い、本書を読みました。
『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』では、著者が仕事を通して身につけてきた複数のスキルと、その習得方法が紹介されています。
本書の特徴は、勉強を仕事の外で行う特別な活動として切り離していないことです。
目の前の仕事から学び、実際に使い、結果を振り返る。
読書も、知識を増やすことだけで終わらせず、自分の仕事で使える形へ変えていきます。
この考え方は、「本を使って、会社員生活を実験する」というDaquo Lab.のコンセプトにもつながると感じました。
1.日々の仕事から「学ぶ問い」をつくる
社会人が勉強を続けようとすると、最初に問題になるのが時間です。
仕事を終えてから本を読み、講座を受け、新しいスキルを練習する。毎日続けようとしても、残業や予定によって勉強時間を確保できない日があります。
そこで本書では、仕事と勉強を切り離さず、日々の業務を通して学ぶ「仕事中勉強法」が紹介されています。
これは、業務と関係のない勉強を仕事中に行うことではありません。
目の前の仕事に対して、
- なぜ、この仕事に時間がかかるのか
- 前回と同じ失敗を繰り返したのはなぜか
- もっと分かりやすく伝えるにはどうすればよいか
- どの工程を減らしたり、仕組み化したりできるか
と問いを持って取り組む方法です。
同じ仕事でも、問いがあれば学びに変わる
たとえば、資料を作成するとします。
完成させることだけを目的にすれば、提出した時点で仕事は終了です。
しかし、
「読み手が短時間で内容を理解できる構成とは何か」
という問いを持って取り組めば、資料作成は伝え方を学ぶ機会になります。
会議であれば、
「なぜ、予定時間内に結論が出なかったのか」
と振り返ることで、会議設計を学べます。
仕事の見積もりが外れたなら、
「どの工程を見落としていたのか」
を確認することで、次の計画へ生かせます。
勉強時間を別に確保できない日でも、仕事から問いを一つ見つけることはできます。
最初に決めるのは「学ぶことを一つ」
ただし、すべての仕事から多くのことを学ぼうとすると、仕事そのものへ集中できなくなります。
そこで、仕事を始める前に確認することを一つだけ決めます。
- 今回は、作業時間を見積もる
- 今回は、質問された内容を記録する
- 今回は、手戻りが発生した原因を確認する
- 今回は、繰り返し作業を一つ探す
仕事が終わったら、分かったことを短く記録します。
仕事を終えるだけでなく、次の仕事へ持ち帰る学びを一つ残す。
それなら、仕事と勉強を切り離さずに続けられます。
2.水平読書で、複数の答えを比較する
仕事から問いが見つかったら、次に答えの候補を集めます。
そこで使えるのが、本書で紹介されている「水平読書」です。
水平読書とは、一つのテーマを決め、複数の本から関連する部分を選んで比較する読書法です。
一冊の本を最初から最後まで読めば、著者の考えをまとまった形で理解できます。
一方で、一冊だけでは、その方法が一般的な考え方なのか、著者独自の方法なのか判断しにくいことがあります。
複数冊を比較すると、次のようなことが見えてきます。
- 多くの本に共通している考え方
- 著者によって意見が分かれる部分
- 方法が機能するために必要な条件
- 特定の職種には使いにくい方法
- 自分の仕事で試して確かめたいこと
複数の本に同じ内容が書かれていても、それだけで正しいとは限りません。
しかし、共通点と相違点を整理することで、一冊だけでは気づかなかった論点を見つけられます。
最初から5冊、10冊を精読する必要はない
本書では、同じテーマの本を複数冊集めて比較する方法が紹介されています。
ただし、最初から多くの本をすべて精読しようとすると、読むことに時間を使いすぎて、実践まで進めなくなります。
私は、次の流れで始めるのがよいと考えています。
- 知りたいことを一つの問いにする
- 関連しそうな本を3冊程度選ぶ
- まず目次と関係する章を確認する
- 共通点と違いを記録する
- 必要な本だけを詳しく読む
- 実際に試したいことを最大3つ選ぶ
以前、約2時間かけて一冊を読んだあとに、求めていた内容がないと分かった経験から、現在は最初の30分で一度全体へ目を通す方法も取り入れています。
内容を完全に理解することが目的ではありません。
知りたいことが書かれているか、もう一度詳しく読みたい箇所があるかを判断するための一読です。
本を読む前に問いがあれば、すべてのページを同じ深さで読む必要はなくなります。
時間術の本を比較して分かったこと
私は「仕事を時間内に終える方法」を探すため、時間術やタスク管理に関する複数の本を読んできました。
比較すると、それぞれの方法が想定している原因が異なることに気づきました。
- 重要な仕事への着手が遅い
- 一日に抱える仕事が多すぎる
- 作業時間の見積もりが甘い
- 予定に余白がない
- 割り込みによって集中が途切れる
- 仕事量ではなく、多忙感が大きくなっている
原因が違えば、必要な方法も変わります。
一冊の本を正解として選ぶのではなく、複数の本から自分の問題に合いそうな方法を集める。
水平読書は、知識を増やすためだけでなく、次のExperimentで何を試すか選ぶためにも使えます。
3.スケール推定で、予測・実践・修正を繰り返す
本を読んで方法を知っても、実際に使わなければ仕事は変わりません。
そこで必要になるのが、方法を仕事へ組み込み、結果を振り返ることです。
本書で紹介されている「スケール推定」は、その練習に使えます。
スケール推定とは、仕事に必要な時間を概算する方法です。
経験のない仕事や複雑な仕事は、正確な時間を見積もることが難しくなります。
その結果、
「かなり時間がかかりそうだ」
「今日は終わらないかもしれない」
と、着手する前から負担を大きく感じることがあります。
曖昧な仕事を小さく分け、仮の時間を置くと、何から始めればよいのかが見えやすくなります。
手順1:仕事を小さく分ける
「資料を作成する」という仕事を、そのまま見積もるのは簡単ではありません。
そこで、次のように分解します。
- 目的と提出期限を確認する
- 必要な情報を集める
- 資料の構成を決める
- 下書きを作成する
- 内容と体裁を確認する
一つひとつの作業へ分けると、所要時間を予測しやすくなります。
同時に、どの工程に不確実性があるのかも見えてきます。
手順2:正解ではなく、最初の仮説を置く
経験のない仕事では、最初から正確な見積もりを出すことはできません。
それでも、
- 30分では終わらない
- 半日あれば進められそう
- 情報収集に最も時間がかかりそう
と範囲を狭めれば、仮の予定を立てられます。
見当がつかない場合は、極端な数字から近づける方法もあります。
「1週間かかるか」「1日かかるか」「2時間で終わるか」と順番に考えると、現実的な範囲を探しやすくなります。
見積もりは未来を正確に当てるための数字ではありません。
現時点で分かっていることと、分かっていないことを整理するための仮説です。
手順3:予定時間と実時間を比べる
仕事が終わったら、見積もりと実際の時間を比較します。
予定より長くかかった場合は、その原因を確認します。
- 必要な工程を見落としていた
- 途中で確認や待ち時間が発生した
- 想定より修正が多かった
- 別の仕事に割り込まれた
- 集中できる時間を確保できなかった
単に「見積もりが外れた」で終わらせず、ずれた理由を残すことで、次の見積もりに使える情報になります。
これは仕事だけでなく、学びにも共通します。
本から得た方法について、
「この方法を使えば、何が変わると思うか」
を事前に予測し、実際に試した結果と比べます。
期待どおりに変わらなければ、方法が合わなかったのか、使い方や前提条件に問題があったのかを考えます。
知識を得るだけでなく、予測して試し、結果との差から学ぶ。
ここまで行って初めて、読書が仕事の変化につながります。
実際に複数の仕事術を試して分かったこと
Daquo Lab.では、「どうすれば仕事を時間内に終えられるのか」という問いについて、複数の本を読み、方法を試してきました。
Closed Listでは、その日に取り組む仕事を限定しました。
TimeBoxでは、仕事ごとに予定時間を決め、実際にかかった時間と比較しました。
どちらも、試せば必ず仕事が時間内に終わる方法ではありませんでした。
しかし、予定と実績を記録したことで、別の問題が見えてきました。
- 一日のCapacityを超える仕事を予定している
- 重要度の低いタスクも多く入れている
- 突発業務を受け入れる余白が少ない
- 仕事によって時間の見積もりやすさが違う
- タスクを限定するだけでは成果感が高まらない
一冊の本を読んだだけでは、これらの問題には気づけなかったと思います。
仕事から問いをつくる。
複数の本から答えの候補を集める。
方法を試し、予測と結果の差を確認する。
この流れを繰り返したことで、「どの仕事術が正しいか」ではなく、「自分の仕事では、なぜ機能したのか、または機能しなかったのか」を考えられるようになりました。
この本を読んで変わった学び方
以前の私は、本を一冊読み終えることを、読書の成果として考えていました。
現在は、本を読む前後に次のことを確認しています。
読む前
- 今、どのような問題に困っているのか
- この本から何を知りたいのか
- 知りたいことが書かれていそうか
読んだあと
- 自分の問題とつながった部分はどこか
- 他の本と同じ主張、異なる主張は何か
- 実際に使いたいことは何か
- 何を記録すれば効果を判断できるか
勉強の成果は、読んだ冊数や使った時間だけでは測れません。
本から得た知識によって、自分の行動や判断がどのように変わったのかまで確認する必要があります。
今の自分から見た、この本の使いどころと限界
本書は、仕事と学びを結びつけたい人や、本を読んでも実践につながらない人にとって参考になります。
特に次のような人と相性がよさそうです。
- 勉強する時間を確保できない
- 本を読んでも内容を忘れてしまう
- 自分に必要な本を選べない
- 仕事の見積もりが大きくずれる
- 読書から実践することを選べない
一方で、勉強時間を増やせば、必ず成果が高まるわけではありません。
仕事中勉強法も、すべての仕事で新しい方法を試すことではありません。
安全性や品質、再現性が求められる仕事では、決められた手順を守ることが優先されます。その範囲内で、振り返りや改善点を見つける必要があります。
水平読書にも注意点があります。
本を集め、共通点を整理するだけで満足すると、実践まで進みません。
また、特定の理論や一人の著者の考えを深く理解したい場合は、一冊を丁寧に読むほうが適しています。
- 全体像や選択肢を知りたいときは、水平読書
- 一つの考え方を深く理解したいときは、精読
と目的によって使い分ける必要があります。
本書の方法は、勉強量を増やすためではなく、自分に必要な学びを選び、仕事で試すために使うのがよいと考えています。
Daquo Lab.で、この本をどう使うか
Daquo Lab.では、本を読んで終わるのではなく、そこから仕事で試す方法を選び、結果を記録します。
今後は、次の流れで読書とExperimentをつなげます。
- 仕事や生活から、解決したい問いを決める
- 関連する本を最初の30分で一度確認する
- 必要に応じて、同じテーマの本を比較する
- 実際に使いたいことを最大3つ選ぶ
- 予想する変化と、確認する項目を決める
- Experimentで試し、結果との差を振り返る
本を最後まで読むことや、多くの知識を記録することをゴールにはしません。
仕事で使いたい方法が一つ見つかれば、その本を読んだ意味はあります。
反対に、目的に合う内容が見つからなければ、途中で読むのをやめても失敗ではありません。
自分の問いに対して、その本は答えを持っていなかったと分かったからです。
BookNoteでは、本から得た考え方と、自分の仕事で使えそうな部分を整理します。
その中から方法を選び、Experimentで実践します。
本を読むことをゴールにせず、実験のための仮説を見つける。
それが、Daquo Lab.における本書の使い方です。
まとめ
『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』から、私が取り入れたいのは次の3つです。
- 日々の仕事から「学ぶ問い」をつくる
- 水平読書で、複数の答えを比較する
- スケール推定で、予測・実践・修正を繰り返す
勉強時間を増やし、本を多く読んでも、仕事で使わなければ行動は変わりません。
一方、仕事から問いを見つけ、必要な部分を読み、実際に試して振り返れば、読書は仕事を改善するための材料になります。
本を読む目的は、知識を増やすことではなく、自分の問いに対する仮説を見つけ、仕事で確かめることです。
この記事で紹介した内容は、本書から得られる学びの一部です。気になった方は、ご自身の仕事や学びたいテーマと照らし合わせながら読んでみてください。
本書で学んだスケール推定に近い考え方として、仕事ごとの予定時間を決め、実時間との差を記録しました。
その結果、時間の見積もりだけでは説明できない、別の問題も見えてきました。


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