TimeBoxで残業は減る?仕事を時間で区切って5日間試した結果|Experiment #002
仕事が終わらない。
では、一つひとつの仕事に使う時間を、先に決めてしまったらどうだろう。
「この資料は60分」
「メール対応は30分」
「この実験は120分」
時間を決めて、その中では一つの仕事だけに集中する。
そして時間が来たら、たとえ終わっていなくても一度仕事を止める。
そうすれば、一つの仕事に必要以上に時間を使わなくなり、残業も減らせるのではないか。
Experiment #002では、仕事を時間で区切るTimeBoxを5日間試しました。
ところが、5日間の記録から見えてきたのは、
「時間を区切れば仕事が早く終わる」という単純な答えではありませんでした。
むしろ今回の実験によって、私の仕事が時間内に終わらない理由が、もう少し細かく見えてきました。
PRE-EXPERIMENT、Experiment #001から残った課題
この実験を始める前に、まず10日間、自分が何にどれだけ時間を使っているのかを記録しました。
その結果、「仕事が終わらない」原因として、5つの可能性が見えてきました。
→ PRE-EXPERIMENT|仕事が終わらない理由を知るために、10日間記録してみた
そこで見えてきた課題をもとに、Experiment #001ではClosed Listを使って「今日やる仕事」をあらかじめ決めました。
→ Experiment #001|Closed Listを10日間試した結果
Closed Listでは、1日にやる仕事をあらかじめ限定し、その中から優先して進める仕事を決めました。
これによって「今日、何をやるのか」は以前より明確になりました。
一方で、まだ問題が残りました。
やる仕事を決めても、一つひとつの仕事が予定した時間で終わるとは限らない。
考え始めると長くなる。
資料を作れば細かいところまで気になる。
実験を始めれば、結果によって次の作業が増える。
そこで次は、
「何をするか」だけでなく、「その仕事に何分使うか」まで決めたらどうなるのか
を試すことにしました。
今回参考にしたのは『YOUR TIME』
今回参考にしたのは、鈴木祐著の『YOUR TIME』です。
本書を読んで特に印象に残ったのは、すべての人に同じ時間術が有効なわけではないという考え方でした。
本書からはほかにも、
- リスト化によって認知する範囲を限定する
- 突発的な出来事を想定し、対応を事前に考える「障害プランニング」
- 過去のタイムログを使って、タスクの所要時間の予測を修正する
といった方法を学びました。
振り返ってみると、「認知する範囲を限定する」という考え方は、前回試したClosed Listで感じた効果ともつながります。
一方、障害プランニングやタイムログによる見積もりの修正は、Experiment #001で残った「突発業務」や「予定時間と実時間のズレ」という課題にも使えそうです。
そして今回、特に試してみることにしたのがTimeBoxです。
今回試す「TimeBox」とは
今回のTimeBoxでは、単にカレンダーに「資料作成 10:00〜11:00」と予定を入れるだけではありません。
仕事に締め切りとなる時間枠を設定し、その時間の中で一つのタスクに集中する方法として運用しました。
今回、自分に設定したルールは大きく3つです。
1.タスクに締め切りを設定する
たとえば資料作成を60分と決めたら、
「60分くらい作業する」ではなく、「60分でここまで進める」
と考えます。
締め切りを意識することで、必要以上に時間を使うことを防げるのではないかと考えました。
2.その時間は、そのタスクだけをやる
TimeBox中は、基本的に設定したタスクだけを進めます。
メールを見たり、別の仕事を途中で始めたりせず、
「今はこれをやる時間」
と決めます。
タスクを切り替える回数を減らし、一つの仕事に集中することも今回試したかったことの一つです。
3.時間になったら、終わっていなくても一度終了する
今回、特に重要なルールにしたのがこれです。
予定した時間を超えて、そのまま仕事を続けるのではなく、
TimeBoxが終了したら、タスクが未完了でも一度止める。
必要なら、改めて時間を確保します。
これまでの私は、仕事が終わらなければそのまま続けることが多く、それが後ろの予定や残業に影響していました。
そこで今回は、「仕事が終わるまで時間を使う」のではなく、「決めた時間の中で仕事をする」という方向に変えてみました。
今回の仮説
今回の仮説は、
タスク毎に締め切りとなるTimeBoxを設定し、一つのタスクだけに集中することで、必要以上に時間を使うことが減り、業務時間内に仕事を収めやすくなるのではないか。
としました。
確認するのは、単に「仕事が終わったか」だけではありません。
予定時間と実時間の差に加えて、
- 計画に対する進捗
- 翌日への繰越
- 仕事が進んだ感
- 成果インパクト
も記録しました。
これを5日間続けます。
5日間の結果
まず、結果です。
| Day1 | Day2 | Day3 | Day4 | Day5 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 業務容量 | 450 | 450 | 450 | 450 | 450 |
| 当初予定 | 500 | 390 | 510 | 575 | 450 |
| 突発追加 | 265 | 0 | 30 | 50 | 0 |
| 実時間 | 609 | 475 | 490 | 585 | 460 |
| 当初予定との差 | +109 | +85 | -20 | +10 | +10 |
| 計画進捗(5段階) | 4 | 3 | 4 | 4 | 4 |
| 翌日繰越 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 |
| 仕事が進んだ感 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 |
| 成果インパクト | 3 | 3 | 3 | 4 | 3 |
5日間の業務容量は、
450分 × 5日=2,250分。
実際に仕事に使った時間は、
2,619分。
合計で369分、約6時間の超過でした。
TimeBoxを使えば、仕事がきれいに時間内に収まる。
少なくとも今回、そんな結果にはなりませんでした。
ただ、この数字を見返していて、もっと気になる数字がありました。
気づき① 仕事を始める前から、時間が足りなかった
5日間の「当初予定時間」を合計すると、
2,425分。
そもそも業務容量2,250分に対して、175分多い仕事を予定していました。
日別に見ると、さらに分かりやすくなります。
Day1:500分
Day2:390分
Day3:510分
Day4:575分
Day5:450分
5日中3日は、仕事を始める前から450分を超えています。
特にDay4は575分。
始業時点で、すでに125分オーバーです。
ここで、TimeBox以前の問題に気づきました。
私は「仕事に時間をかけすぎている」だけではなく、そもそも1日に入れている仕事が多い。
575分の仕事を450分に入れておいて、「時間内に終わらない」と悩んでいたわけです。
もちろんTimeBoxで一つひとつの仕事を速くできれば、多少は縮められるかもしれません。
でも、それだけで解決しようとするのには無理があります。
気づき② では、450分以内にすればいいのか?
ここで、
「なら、最初から450分以内に予定すればいい」
とも考えられます。
ところが、Day2がそれを否定しました。
この日の当初予定は390分。
60分の余裕があります。
それでも実時間は475分でした。
理由の一つは、予定120分だった仕事に240分かかったことです。
一方、Day5は、
予定450分 → 実績460分。
ほぼ予定どおりでした。
この違いを見て、もう一つ気づきました。
問題は「何分予定したか」だけではありません。
その仕事が、そもそも時間を予測できる仕事なのか。
ここが大きく影響していました。
気づき③ TimeBoxが使いやすい仕事、使いにくい仕事があった
5日間使ってみると、TimeBoxとの相性は仕事によってかなり違いました。
今回の仕事を整理すると、こんな感じです。
| TimeBoxとの相性 | 仕事の種類 | 今回感じた理由 |
|---|---|---|
| ◎ 使いやすい | メール・確認・整理 | 終了条件が明確で、自分で時間をコントロールしやすい |
| ○ 比較的使いやすい | 資料作成などのデスクワーク | 時間を区切ることで集中しやすく、必要以上の作り込みを防ぎやすい |
| △ 使いにくい | 実験・探索・考察・検討 | 結果や終了条件が読めず、必要時間を予測しにくい |
| △ 使いにくい | 会議・相談 | 相手に左右され、自分だけでは終了時間をコントロールできない |
※これはTimeBox一般の評価ではなく、今回の5日間の私の仕事で感じた相性です。
メールや確認作業などは、「ここまでを30分」と決めやすい。
時間を意識することで集中しやすくなり、必要以上に仕事を広げることも防げました。
一方で難しかったのが、実験・探索・考察・検討です。
実験は、やってみなければ結果が分かりません。
結果が予想と違えば、次に何をするかも変わります。
考察も同じです。
「60分考えれば結論が出る」とは限りません。
つまり、見積もりが下手というより、
仕事そのものに不確実性がある。
さらに、考える仕事に強い時間制限をつけることで、
「時間内に答えを出さないと」
という焦りが生まれ、かえって思考が狭くなっているように感じる場面もありました。
会議や相談も、自分だけでは時間を決められません。
自分では30分の予定でも、相手とのやり取りによって60分になることがあります。
今回の5日間では、
終了条件が明確で、自分で時間をコントロールできる仕事ほど、TimeBoxを使いやすい。
という傾向がありました。
これは今回、一番大きかった発見です。
気づき④ 時間を管理しても、重要な仕事をしているとは限らない
もう一つ記録していたのが、「仕事が進んだ感」と「成果インパクト」です。
仕事が進んだ感は、5日間平均で3/5。
成果インパクトも平均3.2/5でした。
ただ、これは「TimeBoxを使っても成果が出なかった」という意味ではありません。
私が成果インパクトを高くつけるのは、
重要度の高い仕事を、予定どおり、あるいは予定より早く進められたとき
です。
今回は、そもそも重要度の低いタスクが多い日もありました。
そこで気づいたのが、
時間をうまく使うことと、価値の高い仕事に時間を使うことは違う。
ということでした。
TimeBoxは、
「この仕事に何分使うか」
は決めてくれます。
でも、
「そもそも、この仕事に時間を使うべきか」
までは決めてくれません。
Closed ListとTimeBoxを試して、役割の違いが見えてきた
ここでExperiment #001と#002がつながりました。
前回試したClosed Listは、
何をやるかを決める。
今回のTimeBoxは、
その仕事にどれだけ時間を使うかを決める。
そして、その間にもう一つあります。
1日にどれだけ仕事を入れるか。
整理すると、
① 何をやるか
↓
② 1日の容量にどれだけ入れるか
↓
③ それぞれにどれだけ時間を使うか
です。
私はこれまで、この3つをまとめて「時間管理」の問題として考えていたのかもしれません。
でも実際には、それぞれ別の問題でした。
TimeBoxだけで解決しなかったからこそ、そこが見えてきました。
5日間試した結論
Experiment #002を始める前の問いは、
TimeBoxを使えば、仕事を時間内に終えられるか?
でした。
5日間試した私の答えは、
「すべての仕事に使えば解決する、というものではなかった」
です。
ただし、TimeBoxそのものが役に立たなかったわけでもありません。
終了条件が明確で、自分で時間をコントロールできる仕事では、時間を決めることで集中しやすくなり、必要以上に時間を使うことを防ぐ効果を感じました。
特に、資料作成など細かな体裁などにこだわるとズルズルと長引いてしまうタスクに、高い効果を実感しました。
一方、実験・探索・考察のように時間を予測しにくい仕事や、会議のように他者に左右される仕事では使いにくい。
そして今回、仕事が時間内に終わらない理由を、
① 1日に入れている仕事量
② 仕事時間の不確実性
③ TimeBoxとの相性
に分けて考えられるようになりました。
「もっと速く仕事をしなければ」と考えていたときよりも、問題の輪郭が少しはっきりしました。
問いが変わった
Experimentを始める前は、
「TimeBoxで仕事を速くできるか?」
を考えていました。
今は少し違います。
「どの仕事にTimeBoxを使うべきなのか?」
そして、
「時間を予測できない仕事を、どう扱えばいいのか?」
です。
すべての仕事を同じ方法で管理しなくてもいいのかもしれません。
仕事の性質に合わせて、時間の使い方も変える。
今回のExperimentでは、その入口までたどり着きました。
今回使った自作のTimeBoxを公開します
実際にTimeBoxを仕事で使おうとすると、
「今、何分経ったのか」
「予定では何分だったのか」
「実際には何分かかったのか」
を記録する必要があります。
そこで今回のExperimentでは、自分が使いやすいTimeBoxツールも作成しました。
1日の予定を時間軸に配置し、実際に使った時間も記録できるようにしています。
実験終了後、一般向けに調整したDaquo TimeBox Public v1.0を公開しています。
インストールや会員登録は不要です。
入力した記録は利用しているブラウザ内に保存され、Daquo Lab側には送信されませんのでご安心ください。
次のExperimentへ
ここまで、
Experiment #001では「何をやるか」を制限し、
Experiment #002では「どれだけ時間を使うか」を制限してきました。
それでも、時間を強く制限することが必ずしもよいとは限らないことも分かりました。
特に考える仕事では、時間を意識しすぎることで焦りが生まれることもありました。
では逆に、
仕事と仕事の間に、意図的に「何もしない時間」を入れたらどうなるのか。
次のExperiment #003では、タスクとタスクの間に短い余白――ウェッジを入れる方法を試します。
時間をさらに詰めるのではなく、あえて空ける。
次はその効果を確かめます。
参考にした本|『YOUR TIME』
今回参考にしたのは、鈴木祐著の『YOUR TIME』です。
この本で興味深かったのは、「万人に効果のある時間術」を探すのではなく、人によって時間に対する感覚や課題が異なり、合う方法も変わるという考え方でした。
今回のExperimentでは、その中からTimeBoxを実際の仕事に取り入れました。
ただ、5日間試してみると、私の場合はさらに「人」だけでなく「仕事の種類」によってもTimeBoxとの相性が違うのではないかと感じました。
終了条件が明確な仕事では使いやすい。
一方、実験や考察のように先が読めない仕事では使いにくい。
これは今回、自分で試したからこそ得られた結果です。
また、本書からはTimeBox以外にも、今後試してみたい方法がありました。
障害プランニングは、突発業務によって計画が崩れるというExperiment #001からの課題に使える可能性があります。
さらに、過去のタイムログから予定時間と実時間のズレを確認し、次回の見積もりを修正する方法も気になっています。
今回5日間記録したことで、メール、資料作成、実験、解析などについて、
「自分は予想に対して実際にはどのくらい時間がかかるのか」
というデータも少しずつ蓄積してきました。
これらは、今後のExperiment候補として残しておきます。

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