仕事を改善しようと新しい方法を試しても、期待したほど変わらない。私自身、そんな経験を何度も繰り返してきました。
もしかすると、解決策を探す前に、「何が本当の問題なのか」を確かめる必要があるのかもしれません。
その考え方を教えてくれたのが、平塚知真子著『Google式10Xリモート仕事術』です。
本書から、私が特に使いたいと思ったのは次の3つです。
- 解決策を選ぶ前に、本当に解決すべき問題を見つける
- 完成を待たず、小さく試して早く学ぶ
- 10X思考によって、これまでの前提を疑う
この記事では、本書全体を網羅的に要約するのではなく、Daquo Lab.で実験を進めるうえで参考になった考え方に絞って紹介します。
この本を読んだ理由
私は、仕事を時間内に終わらせるために、これまで複数の時間術やタスク管理法を試してきました。
その一つとしてClosed Listを使い、「その日に取り組む仕事を限定すれば、時間内に終えられるのではないか」と考えたことがあります。
しかし、5日間試しても予定どおりに仕事は終わらず、成果を出せたという実感も得られませんでした。
方法そのものが悪かったわけではありません。
振り返ってみると、私は「仕事が終わらない原因」を十分に確かめないまま、効果がありそうな解決策を選んでいました。
便利なツールや実績のある仕事術を知っていても、自分が抱えている問題と合っていなければ、期待した効果は得られません。
そこで、ツールの使い方だけでなく、その前提となる問題の見つけ方や、新しい方法を試す考え方を知りたいと思い、本書を読みました。
『Google式10Xリモート仕事術』では、Googleの各種ツールを活用した仕事の進め方とともに、問題解決やアイデア創出に関する考え方が紹介されています。
タイトルには「リモート仕事術」とありますが、私が本書から得た最も大きな学びは、特定のアプリの操作方法ではありませんでした。
どのように問題を見つけ、従来とは違う解決策を考え、それを小さく試していくのか。
その考え方が、現在の仕事だけでなく、Daquo Lab.の実験にも使えると感じました。
本書から使いたい3つの考え方
1.解決策を選ぶ前に、本当に解決すべき問題を見つける
本書で最も印象に残ったのが、「解決策よりも問題に注目する」という考え方です。
私たちは何かに困ったとき、できるだけ早く解決策を見つけようとします。
たとえば、仕事が時間内に終わらない場合、次のような方法が思い浮かびます。
- タスクに優先順位をつける
- タイムボックスで予定を管理する
- メールを見る時間を決める
- 朝一番に重要な仕事へ着手する
- AIや自動化ツールを使う
どれも役に立つ可能性があります。
しかし、仕事が終わらない原因が分からなければ、どの方法を選べばよいのか判断できません。
会議が多い人に必要な対策と、重要な仕事の見積もりが甘い人に必要な対策は異なります。
突発的な依頼が多い人と、仕事を抱え込みやすい人でも、選ぶべき方法は変わります。
つまり、最初に考えるべきなのは「どの方法を使うか」ではなく、
「なぜ、この問題が起きているのか」
です。
問題を見つけるために、事実を記録する
問題を特定するには、感覚だけで判断せず、現在起きていることを観察する必要があります。
たとえば「仕事が忙しい」という感覚を、次のような事実に分解します。
- どの仕事に時間を使ったのか
- 予定と実績はどれくらいずれたのか
- 予定外の仕事は何件発生したのか
- 仕事が進んだ日と進まなかった日は何が違ったのか
- どのような場面で集中が途切れたのか
記録することで、「自分は時間管理が苦手だ」という曖昧な自己評価が、検証できる問題へ変わります。
仕事が終わらない原因が業務量なら、予定の立て方だけを工夫しても解決しません。
会議や割り込みが原因なら、個人の作業速度だけを上げても限界があります。
解決策を急いで選ぶより、最初に問題を正しく捉える。
そのほうが、結果的には解決までの遠回りを減らせると感じました。
自分の問題を整理する4つの問い
仕事で困ったときは、方法を探す前に、次の4つを確認してみます。
- 実際に何が起きているのか
- その結果、何に困っているのか
- 原因として何が考えられるのか
- 何が変われば、改善したと判断できるのか
この4つに答えられなければ、まだ解決策を選ぶ段階ではないのかもしれません。
2.完成を待たず、小さく試して早く学ぶ
本書から取り入れたい2つ目の考え方は、最初から完璧な方法をつくろうとせず、試しながら改善することです。
新しい方法を始めるとき、私は事前に細かなルールを決めたくなります。
失敗しないように条件を整え、十分な計画をつくってから実行しようとします。
しかし、実際に使ってみなければ分からないことも少なくありません。
どれだけ考えても、その方法と自分の仕事との相性までは予測できないからです。
そこで、最初の実践を「成功させる本番」ではなく、「情報を集める小さな実験」として扱います。
たとえば、新しいタスク管理法を試す場合、最初から仕事全体へ導入する必要はありません。
- まず5日間だけ使う
- 対象とする仕事を限定する
- 確認する項目を3つ程度に絞る
- 合わないと感じた理由も記録する
- 終了後に継続・修正・中止を判断する
期間と範囲を小さくすれば、期待した効果がなくても大きな損失にはなりません。
また、うまくいかなかった結果も、
「この方法は、どのような条件では機能しないのか」
を知るためのデータになります。
Closed Listを5日で終了して分かったこと
私がClosed Listを試したときも、期待したような効果は得られませんでした。
その日の仕事をリストに入れて締め切っても、予定時間を超える日があり、重要度の低いタスクに時間を使ってしまうこともありました。
そこで5日間で実験を終了しました。
ただし、実験そのものが失敗だったとは考えていません。
記録を振り返ることで、私の仕事ではタスクを限定するだけでなく、次の要素も必要だと分かりました。
- 仕事ごとの所要時間を見積もる
- 突発業務を受け入れる余地を残す
- 重要度の低い仕事を減らす
- タスクとタスクの間に余白を設ける
- 一日ではなく、週単位でも成果を見る
Closed Listが合わなかった理由を考えたことで、次に確かめるべきことが見つかりました。
新しい仕事術を試す目的は、必ず成功することではありません。
自分の仕事について、実践前より一つ詳しくなることです。
3.10X思考で、これまでの前提を疑う
本書では、10%の改善ではなく、10倍の成果を考える「10X思考」が紹介されています。
10%の改善であれば、現在の方法を少し効率化することで対応できるかもしれません。
一方、10倍という目標は、現在の方法をそのまま続けるだけでは達成できません。
そのため、次のように前提そのものを見直す必要が生まれます。
- そもそも、この仕事は必要なのか
- 人が毎回行う必要があるのか
- 複数の作業を一つにまとめられないか
- 従来とは異なる方法を使えないか
- 成果を測る指標そのものを変えられないか
ただし、私は10X思考を、そのまま数値目標として使う必要はないと考えています。
仕事量や売上目標を単純に10倍にすると、現実から離れた目標になることがあります。無理な目標によって、働く時間や負担だけが増えてしまっては意味がありません。
10X思考の使いどころは、目標を無理に大きくすることではなく、現在の延長線上にある方法から一度離れることです。
「記事を10倍書く」ではなく「一つの実験から得られる価値を増やす」
Daquo Lab.に10X思考を使うなら、「記事を10倍書く」という考え方にはしません。
それでは、現在と同じ作業を10倍繰り返すだけだからです。
代わりに、
「一つの実験から得られる学びや価値を、大きくできないか」
と考えます。
一つの実験からは、完成した記事だけでなく、次のようなものを生み出せます。
- 実験前の課題分析
- 実践中の記録
- 実験後の検証記事
- SNSでの途中経過
- 読者も使える記録方法やツール
- 次の実験につながる仮説
こう考えると、記事数を増やすために読書と執筆を繰り返す以外の方法が見えてきます。
10X思考は、達成を約束する目標ではありません。
現在の方法では届かない問いを置き、別のやり方を考えるための思考実験として使うのがよさそうです。
この本を読んで変わった仕事の見方
以前の私は、仕事で困ったことがあると、効果の高そうな方法を探すことから始めていました。
しかし現在は、方法を探す前に、
「その方法によって、何を変えたいのか」
を考えるようになりました。
同じ方法でも、解決したい問題によって確認すべき結果は変わります。
たとえば、タイムボックスを使う場合でも、
- 予定どおり行動できるようになりたいのか
- 重要な仕事の時間を確保したいのか
- 仕事の見積もり精度を高めたいのか
- 残業時間を減らしたいのか
によって、記録する項目も、効果の判断基準も異なります。
また、期待した効果が得られなかったときも、方法を続けられなかった自分を責める必要はありません。
方法が自分の仕事に合わなかった理由を考えれば、そこから次の仮説を立てられます。
仕事術に自分を合わせるのではなく、自分の仕事を観察して、方法を選び直す。
本書を読んだことで、その順番の重要性に気づきました。
今の自分から見た、この本の使いどころと限界
本書の考え方は、新しい方法を考えたり、停滞している問題を見直したりするときに役立ちます。
特に次のような場面と相性がよさそうです。
- さまざまな方法を試しても問題が改善しない
- 新しいツールを導入する目的が曖昧になっている
- 従来の方法を少し改善するだけでは限界を感じる
- 完璧に準備しようとして、実行を始められない
- 失敗を恐れて、新しい方法を試せない
一方で、すべての仕事に10X思考や素早い実験が適しているわけではありません。
私は化学系企業で研究職として働いていますが、安全性や品質に関わる仕事では、素早く試すことよりも、事前の確認や再現性が優先されます。
このような仕事では、失敗から学ぶことを理由に、必要な確認を省くことはできません。
「小さく試す」という考え方を使う場合にも、
- 失敗しても影響を限定できるか
- 元の状態へ戻せるか
- 安全性や品質を損なわないか
- 何を確認できれば実験を終えられるか
を事前に決める必要があります。
「早く失敗する」とは、準備を省いて無謀に行動することではありません。
失敗の影響を限定したうえで、早い段階から現実の情報を得ることだと捉えています。
また、10X思考も、仕事量を増やすためではなく、現在の方法を疑う場面に限定して使う必要があります。
本書の考え方を目的に応じて使い分けることが重要です。
Daquo Lab.で、この本をどう使うか
本書は、一つのExperimentで特定の方法を検証するための参考書というより、Daquo Lab.全体の実験姿勢を支える本として使えます。
Daquo Lab.では、次の順番を基本にしています。
- 現在起きていることを記録する
- 本当に解決したい問題を整理する
- 本から使えそうな方法を選ぶ
- 期間と評価項目を決めて試す
- 効果だけでなく、合う・合わない理由を考える
- 結果から次の仮説を立てる
この流れの中で、本書から得た考え方は次の役割を持ちます。
- 「問題に注目する」は、PRE-EXPERIMENTの課題分析に使う
- 「小さく試す」は、Experimentの期間と範囲を決めるときに使う
- 「10X思考」は、従来の方法に行き詰まったときの発想転換に使う
本書だけをもとに、新しいExperimentを必ず実施する必要はありません。
今後、仕事、ブログ、SNS、ツール開発で問題を分析するときに、実験の設計を支える共通の考え方として活用していきます。
まとめ
『Google式10Xリモート仕事術』から、現在のDaquo Lab.に取り入れたいのは次の3つです。
- 解決策を選ぶ前に、本当に解決すべき問題を見つける
- 完成を待たず、小さく試して早く学ぶ
- 10X思考によって、これまでの前提を疑う
便利なツールや実績のある仕事術を知っていても、自分の問題に合っていなければ、期待した効果は得られません。
また、試した方法が合わなかったとしても、その理由を記録すれば、次の方法を選ぶための材料になります。
私自身も、仕事術を試しては期待した効果が得られない経験を繰り返してきました。
しかし今は、「どの方法が正解か」を探すのではなく、記録と実験を通して、自分の仕事に合う方法を探しています。
良さそうな解決策をすぐに試すのではなく、まず「何を解決したいのか」を確かめることが、実験の出発点になる。
書籍紹介
この記事で紹介した内容は、本書から得られる学びの一部です。気になった方は、ぜひご自身の仕事や抱えている問題と照らし合わせながら読んでみてください。
仕事が終わらないという問題に対して、すぐに時間術を試すのではなく、まず10日間の業務記録から原因を探したことを記事にしていますので、気になる方は是非こちらも読んでみてください。


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