やるべき仕事がたくさんある。
そう思っただけで、まだ何も始めていないのに焦ることがあります。
「今日、この仕事を全部処理できるだろうか」
ところが、実際に一つずつ手を動かしてみると、思っていたほど大した仕事量ではなかった。そんな経験が何度もあります。
私はこれまで、この感覚をうまく言葉にできていませんでした。
菅原洋平さんの『多忙感』を読んで知ったのが、仕事が多い「多忙」と、忙しいと感じる「多忙感」は同じではないという考え方です。
もしかすると私は、仕事そのものだけでなく、「仕事に追われている感覚」にも疲れていたのかもしれません。
この記事では本書を網羅的に要約するのではなく、自分の仕事と、これまでDaquo Lab.で試してきた仕事術につながった部分を中心に整理します。
この本を読んだ理由
Daquo Lab.では現在、
「どうすれば仕事を時間内に終えられるのか?」
をテーマに、自分の仕事を記録しながらさまざまな方法を試しています。
Closed List、First Task、TimeBox、メールを確認する時間の制限、仕事の間に短い余白をつくるWedge。
方法は違いますが、目的は「限られた時間の中で仕事を進めること」です。
その実験を続ける中で、少し気になることがありました。
同じくらいの仕事量でも、「今日は忙しい」と強く感じる日と、それほど感じない日があります。さらに、まだ何も始めていない段階から、目の前に並んだタスクを見ただけで焦ることもあります。
仕事を時間内に終えることを考えるなら、スケジュールや仕事量だけでなく、この「忙しいと感じる状態」についても知っておいた方がいいのではないか。
そう考えて読んだのが『多忙感』です。
「仕事が多い」と「忙しい」は同じではなかった
本書で最も印象に残ったのが、「多忙」と「多忙感」を分けて考えることでした。
実際に仕事が多いことと、自分が忙しいと感じていることは必ずしも一致しません。
これは自分の仕事を振り返ると、かなり心当たりがあります。
朝、今日やらなければならない仕事を見て、
「これ、全部終わるのかな」
と焦る。
ところが一つずつ処理していくと、意外と時間がかからず、夕方には「思ったより大したことなかったな」と感じることがあります。
仕事そのものが私を疲れさせていたのではなく、複数の「まだ終わっていない仕事」を同時に頭の中へ置いていることが、忙しさを大きくしていたのかもしれません。
本書では、多忙感を生み出す要因として「脳疲労」と「外乱」が取り上げられています。
この二つを知ると、これまで仕事中に感じていた疲れにも説明がつくように思いました。
「気がかり」を抱えながら仕事をしていた
一つの資料を作っているとします。
作業そのものに集中したいのに、
「あの解析もしなければ」
「メンバーに確認しておかなければ」
「午後の会議までにあれも準備しないと」
と、別の仕事が頭に浮かびます。
手を動かしている仕事は一つでも、頭の中には複数の仕事が存在しています。
さらに分かりやすいのがメールです。
資料を作成している途中で、参考情報を確認するためにメールを開く。すると別の新着メールが目に入り、そのメールに返信する。返信しているうちに、そこに書かれていた別の仕事を思い出し、そのタスクにも手をつける。
しばらくして、
「そういえば、最初は資料を作っていたんだった」
と気づく。
ずっと仕事はしています。それなのに、最初に進めたかった仕事はほとんど進んでいません。
これまでは単に「集中できなかった」と考えていました。
しかし『多忙感』を読んでからは、外から注意を奪われることと、複数の気がかりを抱えることで脳を疲れさせていたのではないかと考えるようになりました。
「外乱」を減らす
本書でいう「外乱」は、こちらの注意を外から奪うものです。
仕事であれば、メール、チャット、電話、通知などがあります。
どれも仕事には必要なので、完全になくすことはできません。問題は、目の前の仕事に集中している最中にも、それらがこちらの注意を奪うことです。
特に印象に残ったのが、疲れているときほど新しいメールやチャットを見たくなる、という話でした。
これはかなり心当たりがあります。
集中力が落ちてくると、なんとなくメールを開く。新しいメールが来ていれば確認する。すると別の仕事が頭に入り、そちらにも注意を向ける。
疲れているから新しい刺激を見る。新しい刺激を見ることで、さらに注意が分散する。
この循環が起きていたのかもしれません。
そこで、本書を読んでまず1つ変えてみることにしました。
- メールやチャットの受信通知のポップアップをOFFにする
情報そのものを遮断するのではなく、自分の意思とは関係なく注意を奪われる機会を減らすことから始めます。
First Taskには、別の意味もあった
もう一つ印象に残ったのが「行為主体性」という考え方です。
朝、仕事を始めて最初にメールを開く。
そこには依頼、質問、確認事項など、他人から届いた仕事が並んでいます。そのまま返信を始めれば、一日の最初から「来た仕事に対応する」状態になります。
一方で、最初に自分が今日進めると決めた仕事へ着手すれば、
「やらされている」のではなく、「自分でこれをやっている」
という感覚を持ちやすくなります。
この考え方を読んだとき、Daquo Lab.でこれまで試してきたFirst Taskを思い出しました。
First Taskでは、一日の最初に最も重要な仕事へ着手します。
もともとは、重要な仕事を後回しにしないために取り入れた方法でした。
しかし『多忙感』の視点から振り返ると、別の意味も考えられます。
メールやチャットに反応して一日を始めるのではなく、
「今日はまず、この仕事を進める」
と自分で決めて動く。
重要な仕事を進めるだけでなく、一日の最初に仕事の主導権を自分へ戻す方法でもあったのかもしれません。
First Taskを含め、Closed Listを実際の仕事で試した結果については、こちらの記事に記録しています。

仕事を早く終わらせるほど、追われることもある
『多忙感』では、時間の感じ方として「ムービングタイム」と「ムービングエゴ」という考え方も紹介されています。
時間がこちらへ迫ってくるように感じるのがムービングタイムです。
「10時までに終える」
「あと30分しかない」
「次は11時から会議」
こうした時間感覚は、仕事を効率よく進めるためには役立ちます。
Daquo Lab.でもTimeBoxなど、時間を区切って仕事をする方法を試してきました。
だからこそ、この部分は少し気になりました。
時間を細かく管理し、効率よく仕事を処理する。
一見すると理想的です。
でも、一つ終わった瞬間に、
「次、次」
と別の仕事へ移りたくなる。
何もしていない時間が落ち着かず、常に何かを処理していたくなる。
仕事は進んでいるのに、ずっと時間に追われている。
もしそうなっているなら、効率化することと、気持ちよく働くことは必ずしも同じではないのかもしれません。
Wedgeは「次を選ぶ時間」でもある
ここで思い出したのが、『WHITE SPACE』を読んで取り入れたWedgeです。
Wedgeでは、仕事と仕事の間に短い余白を入れます。
私は当初、仕事の合間に脳を休ませたり、直前の仕事を整理したりするための時間として捉えていました。
しかし『多忙感』を読んだあとでは、もう一つ役割があるように思います。
仕事が終わった瞬間、反射的に次のタスクへ飛びつかず、一度止まる。
そして、
「本当に今、これをやる必要があるのか」
「次に進めるべき仕事は何か」
と考える。
Wedgeは単なる休憩ではなく、時間や仕事に反応する状態から、自分で次の行動を選ぶ状態へ戻るための余白としても使えるのかもしれません。
これは、今後のExperimentでも確認してみたいポイントです。
メールを「全部確認してから処理する」をやめてみる
本書を読んで、もう一つ変えてみたいのがメールの処理方法です。
これまではメールを確認する時間になると、まず新着メール全体へ簡単に目を通していました。その後、対応が必要なメールだけを残し、優先順位をつけて処理します。
一見すると効率的です。
ただ、この方法では、例えば対応が必要なメールが5件あった場合、最初の1件を処理している間にも、
「あと4件ある」
という情報をすでに知っています。
目の前では一つしか処理していないのに、頭の中には複数の未処理案件が存在することになります。
そこで今後は、メールを確認する時間そのものは限定したまま、
1件確認する → 必要な対応をする → 終わったら次を見る
という方法を試してみます。
目の前の1件以外を頭に抱えなければ、多忙感や疲れ方は変わるのでしょうか。
もちろん、まだ試していないので効果は分かりません。また、古い重要メールや緊急度の高いメールを見落とさない仕組みも必要です。
まず仕事の中で試し、変化を観察してみます。
『多忙感』を読んで、過去のExperimentの見え方が変わった
『多忙感』だけを使った、新しいExperimentを始める予定はありません。
それでも、この本はDaquo Lab.にとってかなり意味のある一冊でした。
理由は、これまで別々に試してきた仕事術に、一つの共通点が見えてきたからです。
Closed Listでは、その日にやる仕事を限定する。
First Taskでは、自分で決めた重要な仕事から一日を始める。
メール確認時間を限定すれば、外から注意を奪われる回数を減らせる。
Wedgeでは、次の仕事へ移る前に一度立ち止まる。
これまでは、それぞれ違う問題を解決するための方法として試していました。
しかし『多忙感』の視点を重ねると、
注意を奪われにくくし、自分で仕事を選んでいる状態をつくる。
という共通点があるように見えてきます。
本を読んで新しい方法を見つけることだけが、読書の価値ではない。
すでにやったExperimentの意味を、あとから別の本が教えてくれることもある。
今回の読書では、それを強く感じました。
「仕事を時間内に終える」の、その先
Daquo Lab.では、
「どうすれば仕事を時間内に終えられるのか?」
という問いから実験を始めました。
その問いは今も変わっていません。
ただ、『多忙感』を読んで、一つだけ追加で見ておきたいことが増えました。
仮に仕事を時間内に終えられるようになっても、一日中、
「次はこれ」
「あと30分」
「まだあれも残っている」
と追われ続けていたら、それを良い働き方と呼べるのでしょうか。
時間内に仕事を終える。
そのうえで、
仕事に追われるのではなく、自分で仕事を進めている感覚を持てるか。
効率だけを追いかけるのではなく、この感覚も今後のExperimentでは観察していきたいと思います。
今回読んだ本
今回のBookNoteで取り上げたのは、菅原洋平さんの『多忙感』です。
「仕事が多いから忙しい」と考えるだけでは見えにくかった、脳疲労や外乱、行為主体性という視点から、自分の働き方を捉え直すきっかけになりました。
この記事で紹介した内容は、本書から得られる学びの一部です。気になった方は、ぜひご自身の仕事や生活と照らし合わせながら読んでみてください。
まとめ
『多忙感』を読んで最も大きかったのは、新しい仕事術を一つ手に入れたことではありませんでした。
これまで自分が何となく感じていた、
「仕事を始める前から忙しい」
「仕事はしているのに、なぜか進んでいない」
「一日中何かをしているのに疲れる」
という感覚に、別の見方ができるようになったことです。
仕事が多いことと、忙しいと感じることは同じではない。
だから、仕事を減らすことだけでなく、どういう状態で仕事をしているのかにも目を向ける。
そして本を読んだことで、過去のExperimentにも新しい意味が見えてきました。
これも、本を使って働き方を実験するDaquo Lab.で残しておきたい、一つの結果です。
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